IT ソフトウェア開発 島崎法律事務所−京都−2017.4.27−弁護士業務とIT
Welcome to my homepage

Side Menu


弁護士業務とIT   −目次−

013 「ネットの電話帳」に削除命令【京都地裁判決 H.29.4.25】

 「ネットの電話帳」に対し、京都地裁で、情報の削除を命じる判決が出ました。
    
 評価すべき点

 判決は、NTTが公開している情報であっても、ネットで広く公開する行為は、プライバシーの侵害であって許されないという判断をしたもので、当然のこととは言え、大いに評価できるものです。

 ネットの電話帳がなぜ問題なのか、また、法的争点はどこにあるのか、といった点については、以前の記事、ネットの電話帳」によるプライバシー侵害【本日、提訴】に記載したとおりです。

 判決は、ネットの電話帳が適法だと主張する被告の言い分をことごとく排斥したものであり、控訴審で覆ることは考えられません。

    
 判決の問題点

 ところで、この裁判では、被告が訴状や準備書面などの訴訟関係書類を、原告の氏名、住所などを伏せることなくネットで公開したことから、訴訟関係書類に記載された氏名、住所等の削除も求めていました。

 ところが、この点について、判決は、住所等の削除は命じたものの、氏名の削除は認めないという、信じがたい判断を下しました。

 プライバシーを護るために訴訟を提起した場合、提訴された被告が対抗手段として原告の氏名を伏せることなく訴状をネットで公開しても法的に許される、というのであれば、プライバシー侵害の被害者は、新たなプライバシー侵害を覚悟しない限り、訴訟を起こすことはできなくなってしまいます。

 この点で、今回の判決は、憲法上保障された「裁判を受ける権利」を否定するもので、裁判所自らがプライバシー侵害に関する訴訟の途を狭めたものであって、到底、容認できるものではありません。

 判決は、裁判の公開は憲法上の絶対的な要請であって、訴訟を提起する以上は氏名が公開されることは甘受すべきであり、ネットで公開することも許容されると述べています。

 しかしながら、憲法上、裁判の公開が規定されているのは、「密室裁判」を防ぐためであり、その目的からすれば、訴訟記録の閲覧や裁判の傍聴が認められば十分であり、原告の氏名をネットで公表する必要は、全くありません。

 裁判所まで足を運べば、裁判を起こしている原告の氏名は分かるのだから、ネットで公開してもいいだろう、というのは、ネットの特質を無視した理窟です。

 この理窟がなりたつなら、図書館に行けば過去から現在までの電話帳が揃っており、結局は、原告の住所、電話番号は分かるのだから、これをネットで公開するのも自由であるという「理窟」も成り立つことになります。

 判決は、「ネットの電話帳」そのものについては、情報獲得の容易性、情報の伝搬性など、ネットの特質を十分に踏まえて、上記の「理窟」を排斥したのですが、訴訟関係書類の公開に関しては、「裁判の公開」を絶対視し、ネットの特質を見失ってしまったのです。

 憲法上の権利である「裁判を受ける権利」を自ら否定する判決を放置しておいていいはずはありません。控訴審では、この判決が覆ることを確信しています。



京都新聞【2017.4.26】に掲載された談話です。


目次へ
 


012 ネット情報の削除について、最高裁が新判断【H.29.1.31】   2017.2.3

 ネット情報の削除に関する最高裁決定が出ました。
 
 簡単にいうと、自分の氏名でネット検索をすると、過去の犯罪歴が出てくるため、その削除をグーグルに求めたところ、最高裁は、削除請求を否定した、という事案です【日経新聞 2017.2.1 】 。

 この決定は、プライバシー保護の点からすると、若干の前進面と、大きな問題点を含んでいます。まずは、「前進面」から解説します。

   
 前進面 【検索業者(グーグル)の言い逃れ許されない】

 これまで、グーグル、ヤフーなどの検索業者は、自分たちは、情報の流通を媒介しているだけで、自らが表現行為を行っているのでないから、検索結果がどのようなものであっても、自分たちには責任がない、といった主張をしてきました。

 けれども、そのような無責任な言い逃れは許されないという判断は、既に、大阪高裁平成27年2月18日判決でも出ていました。

 今回、初めて、最高裁として、検索業者も自ら表現行為を行っているものであり、検索結果の提供については、法的責任を負う、という判断を下したしたものです。

 今後は、前記のような検索業者の言い逃れが通らないことが確定したわけですから、削除請求の裁判は、検索結果そのものが、名誉毀損、プライバシー侵害にあたるか、という論点のみに集中して審理が行われることになり
ます。

    
問題点 @ 【プライバシー保護のハードルを上げる、判例変更】

 これまで、過去の前科情報と表現の自由の関係については、最高裁のH.6.2.8ノンフィクション「逆転」事件判決がありました。

 この判決は、前科等の公表に対して損害賠償請求が認められるのは、「前科等にかかわる事実を公表されない法的利益が(公表による利益よりも)優越するとされる場合」である、としていました。

 ところが、今回の最高裁決定では、検索結果の削除請求が認められるのは、「当該事実を公表されない法的利益が(公表による利益よりも)優越することが明かな場合」に限るとしました。

 一見すると、同じような表現に見えますが、「逆転」判決は、「優越するとされる場合」というのに対し、今回の決定は、「優越することが明かな場合」と、「明かな」という文言が追加されているのです。

 些細な違いのように見えるかもしれませんが、「明かな」という文言があることによって、下級審の裁判官は、削除請求を認めることを躊躇することが予想され、それこそが、「明かな」という文言を追加した最高裁の意図なのです。

 下級審裁判官のうち、相当数が、自分の出した判決が上級審で覆されることを恐れています。

 私も、これまで、従前の判例に従った結論では、どう考えてもおかしいだろうという事案で、地裁の裁判官が独自の判断をするかどうかというう場面で、「上級審で持ちませんから・・・」という愚痴とも諦めともとられる発言を裁判官の口から聞いたことが、何度かあります。

 上級審の顔色をうかがわず、自らの信念に基づいて判断をする、藤山雅行裁判官【wikipedia】、樋口英明裁判官【wikipedia】のような裁判官は、残念なことに、まだまだ、貴重な存在なのです。

    
問題点 A 【判例変更の背景に潜む価値観】

 今回の決定で見過ごすことのできないのは、検索結果の削除が、単に検索業者の表現行為の制約であるだけでなく、「検索結果の提供を通じて果たされている上記役割に対する制約でもある」と述べている点です。
 
 「上記役割」について、最高裁は、「検索事業者による検索結果の提供は、公衆がインターネット上に情報を発信したり、インターネット上の膨大な量の情報の中から必要なものを入手したりすることを支援するものであり、現代社会においてインターネット上の情報流通通の基盤として大きな役割を果たしている。」と述べています。

 最高裁は、【プライバシーを侵害された個人 VS 検索結果を公表する検索業者】、という図式から、意図的に、【プライバシーを侵害された個人 VS インターネットの便益を受ける社会全体】という図式に、持ち込んでいるのです。

 このような枠組みさえ作ってしまえば、大多数の国民は、「インターネットの便益が損なわれては大変だ」と思うわけであり、一個人のプライバシーのために、社会全体の便益が犠牲にされるのは問題だ、という結論に誘導されてしまうのです。

 姑息極まりない最高裁の決定ですが、この手法は、敵ながら天晴れという外はありません。

 この手法は、様々な場面で応用可能です。

 @公害問題
   工場周辺の住民 VS 公害企業 という対立を
   工場周辺の住民 VS 工場で生産される製品の有用性に、
 
 A空港問題
   空港周辺の住民 VS 空港運営会社という対立を
   空港周辺の住民 VS 24時間発着可能な空港の有用性に、

 B基地問題
   基地周辺の住民 VS 米軍基地という対立を
   基地周辺の住民 VS 日本国の防衛上の必要性に、

それぞれ置き換えることによって、少数者の基本的人権を、いとも簡単に葬り去ってしまうことができるのです。

 そもそも、基本的人権が保障され、その侵害を救済するためにこそ、裁判所は存在するのです。

 多数者の利益は、民主主義社会においては、制度上、選挙を通じて、自ずと守られる仕組みなっています。これに対して、少数者の基本的人権は、民主制の過程では犠牲になる場合があるからこそ、裁判所が、多数の意思に逆らってでも、少数者の利益を保護しなければならないのです。

 検索サービスの有用性を一面的に強調する最高裁決定は、このような裁判所の役割に対する理解を欠いたものといわざるをえないのです。

    
問題点 B 【更生の利益についての無配慮】

 過去の逮捕、有罪判決などの情報が氏名で検索すると、いつまでも表示されるというのは、本人にとっては、就職その他の社会活動をする上で、決定的な障害となります。

 このことは、仮に、一度有罪判決を受けたら、そのことを示す名札を着用しなければいけないとされている社会を考えれば、容易に想像がつくでしょう。

 そして、このように一度でも犯罪を犯してしまうと、永久に社会活動が阻害されるということは、再犯を誘発することになるのです。

 もちろん、だれもが再犯をするわけではなく、再犯をする本人の責任が否定されるわけでは、ありません。

 しかし、何年経っても前科情報が出てくるという社会では、一度、罪を犯した人間は、社会内で更生することができず、結果的に、再犯率が高くなるということは、統計はないものの、合理的な推論として、誰しも否定できないものと思います。

 最高裁決定は、前記のように、一方では、検索サービスの利便性を考慮すべきと言いながら、他方で、更生を阻害することによる再犯の発生率の上昇という点については、一顧だにしていないのです。

 そういう意味では、【社会全体の利益】という点でも、最高裁決定は、大きな問題を孕んでいるのです。

    
問題点 C 【具体的判断の乱暴さ】

 今回の最高裁決定は、考慮すべき事情については、あれこれ述べながらも、具体的な判断においては、問題となった犯罪が「児童買春」であったことから、「社会的に強い非難の対象とされ、罰則をもって阻止されている」とし、いまだに、「公共の利害に関する事項である」として、削除請求を否定したのです。

 けれども、どんな犯罪でも、「罰則をもって阻止されている」のは当然のことであり、上記の「刑罰をもって阻止されている」というのは、全く無内容な記述です。

 また、「公共の利害に関する事項」といっても、客観的な犯罪事実そのものは、公共の利害に関すると言えても、犯罪と結びつけられた犯人の実名が、なぜ、「公共の利害」に関するのかについては、一言も説明はありません。

 最高裁は、このように、ある意味、制度上、「言いっぱなし」でも許されるわけで、5人の裁判官は、その上に胡座をかいて、当事者に納得してもらおうという姿勢は全くないのです。



問題点 D 【理由なし、わずか2行の「隼町文学」】

 実は、ここまでに論評した最高裁決定は、神田知宏弁護士が代理人をしていた事件の決定です。私が代理人をしていた事件については、上告受理申立をしていたのですが、同じ日に上告審として受理しないとの決定が出ました。

 ただ、私の手元に届いた決定には、神田弁護士の事件の決定と異なり、理由は、わずか2行「申立の理由によれば、本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。」というものでした。

 よく、一方的な離婚の宣告のことを「三行半(みくだりはん)」と言いますが、本件では、それよりも短いのです。最高裁に上告受理申立をして、この2月で、ちょうど2年ですから、それだけ待たせておいて、僅か45文字、短歌と俳句を併せたよりも少ない字数の文章で、切り捨てられたのです。計算上、1か月に2文字を書けば、「理由」はできあがるのです。

 霞が関の官僚が、法律の条文中の単語の後に「等」をつけることで法律の執行段階で事実上何でも取り込めるようにしたり、原発関連の「事故」を「事象」と言い換えたりするのを揶揄する「霞が関文学」という言葉がありますが、反論の手がかりを一切、与えないように、文字数を削り込むという、最高裁の高度に洗練された手法は、その所在地の名前に因んで、「隼町文学」と呼ぶのが適切だと考えます。


目次へ 

011 マイクロソフト、Windows10強制インストール問題    20166.13

 以前から、マイクロソフトが、Windows10への更新を執拗に奨めて来るという問題がネットを賑わせていましたが、最近になって、強制的に更新されてしまうといった事態が相次いでいます。

 その結果、従前のソフトが動かなくなった、メールのデータが失われた等々、現実的な被害も出てきています。

 先日のマイクロソフト日本法人の記者会見での説明では、「自動車メーカーが性能のいい新型車を開発したからと言って、お客さんが慣れ親しんだ旧型車を引き揚げて新型車を押しつけることはないだろう」といった記者の質問に対して、担当者は、正面から答えることなく、いかにWindows10が優れているかを力説することに終始していました。

 担当者の説明が事実だとしても、また、担当者が「善意」であるとしても、客観的に不具合が生じている以上、マイクロソフトの行為は「不法行為」と言わざるを得ず、同社に対する損害賠償請求が可能です。

 実際、私の周囲にも、強制的に更新されたという被害者が相次いでおり、損害賠償請求訴訟を検討しておられる方もいます。

 「お節介」極まりないマイクロソフトに対して、損害賠償請求を考えておられる方は、当事務所までご連絡下さい。多数の方が訴訟をされる場合には、集団訴訟という形をとることも検討しております。

目次へ 


010 IT犯罪と警察                          2016.4.21

 最近では、インターネットを利用した犯罪の急増に伴い、各地の都道府県警察では、サイバー犯罪室を設けている。

 先日、東京の警察署でIT関係の事件の告訴の件で相談に行ったのだが、所轄の警察だけではIT関係の捜査に関して十分な話ができないと考え、予め、お願いしていたところ、本庁のサイバー犯罪対策室から2名の警察官が出向いて、対応してくれた。

 聞くところによると、警視庁では、サイバー犯罪に、300人くらいの体制で臨んでいるそうだった。別件で、兵庫県警のサイバー犯罪対策室に電話で相談したこともあるのだが、兵庫県警でも、50人くらいの体制で臨んでいるそうだ。

 考えてみれば、ネット上の詐欺、ネット上の脅迫、ネット上の名誉毀損と、ネットを利用した犯罪が、これだけ急増しているのだから、警察が、これだけの人員をネット犯罪に振り向けるのも当然の成り行きというべきだろう。

目次へ 


009 遠方の皆様からの御依頼                        2015.10.28

 1年くらい前から、特にIT関係の事件で、東京や沖縄など遠方の方からの問い合わせが増えて来ました。

 ただ、どうしても、遠方ということで、当事務所への御依頼を躊躇される方もおられます。

 そこで、遠方の弁護士に依頼する場合は、どういう点が問題か、また、どうすれば、その問題を解消できるかということについて、説明させていただきます。
 
 遠方の裁判所への出頭の問題

 たとえば、東京の方が横浜の人を相手に裁判をするということで、京都の弁護士に依頼するとします。

 この場合、原則的な管轄裁判所は横浜地裁なのですが、多くの場合、東京地裁でも裁判を行うことができます。ただ、代理人の弁護士が京都だからといって、京都地裁で行うことはできません。

 東京でも横浜でも、京都の弁護士が裁判所まで出向いて行くとなると、出張費(交通費その他)が必要になりますが、裁判の期日が何回も開かれると、その費用も馬鹿になりません。

 電話会議の利用

 私が弁護士になった頃は、このような場合、毎回、遠方の裁判所まで出頭しなければならなかったのですが、法律が改正されて、今では、手続の大半を「電話会議」の方法で行うことが可能となっています。

 たとえば、東京地裁で裁判をする場合、相手(被告)の代理人となった弁護士は東京地裁の電話会議室に出頭します。そして、その電話会議室から、京都の私の事務所に電話がかかってきて、電話会議が行われるのです。

 ただ、すべての手続を電話会議で行うことができるわけではありません。それでも、電話会議を利用すれば、裁判の期日が、たとえば、10回開かれるとした場合でも、実際に遠方の裁判所まで出かけるのは、2、3回ですむことになり、大幅な負担軽減となります。

 第1回期日のご本人の出頭

  弁護士に裁判を依頼した場合、裁判の期日に裁判所に出頭するのは、弁護士だけであって、依頼者の方は出頭する必要はありません。

 従って、第1回期日も弁護士が出席するのが普通なのですが、出張費の負担を軽減するために、場合によっては、第1回期日は、弁護士ではなく、依頼者の方に出頭していただくということも考えられます。

 というのは、第1回期日は、実質的に法廷で難しいやり取りが行われることは少なく、双方の提出した書面を確認するなど、弁護士でなくても対応できることが多いのです。
 
 もちろん、この方法をとる場合には、事前に弁護士の方から、当日の対応について事前に、十分にレクチャーをさせていただきます。

 このように、電話会議、第1回期日の依頼者の方の出頭、といった方法をとることにより、極力、出張費の御負担を抑えることが可能です。


 弁護士との打ち合わせの問題

 裁判をするには、依頼者の方と弁護士との間で、事前に、詳細な打ち合わせが必要です。また、裁判が始まってからも、裁判の進行に応じて打ち合わせが必要になってきます。

 多くの場合、弁護士の事務所までお越しいただいての打ち合わせということになるので、遠方の方の場合、そのための労力、交通費なども大きな御負担となってきます。

 メールと電話の併用

 打ち合わせをするといっても、簡単なものなら、電話だけでも問題はありません。

 しかし、少し複雑な内容になった場合、書類を見ながら話をした方が分かりやすかったりすることがあります。

 今では、電話の途中で書類を見ていただく必要が出てきたら、その場で、メールで書類をお送りして、同じ書類を見ながら、お話をすることも可能です。

 テレビ電話の利用

 電話とメールの併用で、それなりに複雑な内容の打ち合わせも可能ですが、やはり、コミュニケーションは、顔を見ながら話をするのがベストです。

 インターネットが普及する以前は考えられなかったことですが、今では、スカイプなどの無料のサービスを利用することにより、テレビ電話を利用して打ち合わせをすることも可能です。

 実際、これまで、海外におられる方の依頼を受けて、日本国内で裁判を行ったこともあるのですが、直接にお会いしたのは、2回だけで、それ以外の十数回の打ち合わせは、すべて、スカイプで行ったことがあります。

 これまでテレビ電話を利用されたことのない方でも、パソコンさえあれば、あとは、2000円程度のウェブカメラを購入すれば、それだけの費用でテレビ電話を利用することが可能です。

 もちろん、スカイプを利用するには、ウェブカメラをセットするだけでは足りず、スカイプへの登録などの設定を行うことが必要です。

 とはいっても、さほど難しいことではなく、ご自身でできない方でも、電話で操作を説明させていただきますので、そのとおりに操作していただければ、20分程度で、テレビ電話を使えるようになります。

 地元の弁護士の紹介

 遠方の弁護士に依頼する場合の問題点と、その解消策について、いろいろ述べてきましたが、地元の弁護士に地元の裁判所で裁判をしてもらうのが、望ましいことに変わりはありません。

 また、一口にIT関係の事件といっても、千差万別で、さほど専門的な知識がなくても対応できる場合があります。

 幸い、北は、北海道から、南は、鹿児島まで、各地に懇意にしている弁護士がおりますので、事件の内容によっては、相談者の方の地元の弁護士を紹介することも可能です。

 また、過去には、地元の弁護士と私との共同受任という形で、お引き受けしたこともあります。

 このように、受任の形態は様々ありますので、お気軽にご相談下さい。


目次へ 

008 「隠れ家バー」事件判決(大阪地裁 H27.2.23)の紹介  2015.9.23

 「隠れ家バー」事件の大阪地裁判決(2015.2.23)を紹介します。

 この事件は、「隠れ家」的なバーであることを売りにしていた大阪のバーの運営会社が、食べログに口コミ情報などを掲載されたのは、店の営業を妨げる行為であるとして、食べログを運営する会社に情報の削除と損害賠償を求めた事件です 【 産経新聞 2014.2.19 】 。

 まず、判決は、プライバシー侵害を根拠として店舗に関する情報の削除を請求することは認められないとした上で、営業権に基づく削除請求に関しては、以下のとおり、店舗の経営主体は、営業権に基づき、店舗に関する情報を公開するか否かについて、選択する権利を有するとしました。


 次に,営業権又は業務遂行権であるが,営業の自由,職業活動の自由は,憲法22条1項の職業選択の自由に包摂されるものとして,保障されているものと解される。この権利の享有主体は,個人のみならず,法人においても認めることができる。
 したがって,原告は,自らの業務遂行のため,自己の情報に関し,公開するかどうかについて,選択する権利又は利益を有するものと考えられる。


  ところで、本件では、「隠れ家バー」というものの、判決によると、原告自身もホームページなどで積極的に情報の発信を行っていたとのことです。


 本件店舗の店名,住所,電話番号,地図,店内見取り図等は,原告自身がホームページで公開しているし,その他,ブログやツイッター等により,本件店舗の情報が公開されているものは多数認められる。


 また、判決は、以下のとおり、被告による情報掲載の方針を認定しています。
    

 被告の侵害行為の態様は,原告からの申入れに対し,店舗情報等が公開されているので応じなかったというものであり,被告は,その権限で削除をすることは可能であるものの,Aでは,当該店舗に批判的な評価も含め,管理者である被告の作為による情報操作をせず,ユーザーの情報をそのまま提供するサイトを設けるという方針で行っており,一般的に公開されている情報であれば掲載するという方針で原告の申し入れに応じなかったに過ぎない


  判決は、以上の点を踏まえて、被告に情報を削除する義務認められないと判断しました。
 

 被告が,原告からの申し入れに応じないことが違法と評価される程度に侵害行為の態様が悪質ということはできない。そうであれば,(・・・中略・・・)前記先行行為に基づく条理上の作為義務が発生すると認めることはできない。


 要するに、判決は、一般論としては、店舗の運営主体に店舗に関する情報をコントロールする権利を認めながらも、@原告自身も一定の情報を発信していた事実、A被告も情報発信にあたって一定の節度をもって行っていたという事実を考慮して、削除請求を認めなかったものです 【 判決全文は、こちら(最高裁) 】 。

 この大阪地裁の判断の枠組みからすると、@原告自身が情報の発信を一切行っておらず、A被告が原告の態様にかかわらず無条件に情報を公開していた場合には、削除請求は認められることになります。

 なお、その後、この事件は、大阪高裁で和解が成立したようです 【 朝日新聞 2015.9.2 】 。

 

 
    

目次へ 


007 「ネットの電話帳」によるプライバシー侵害【本日、提訴】 2015.8.14

 本日(2015.8.14)「ネットの電話帳」をプライバシー侵害で提訴しました。

 以前は、電話を持っている以上、電話帳に氏名、住所、電話番号が掲載されるのは当たり前と考えられていました。

 ところが、プライバシーに関する社会の意識の変化に伴い、電話帳への掲載を望まない人が多くなり、20年くらい前から、NTTは、掲載を希望しない人の情報は、電話帳に掲載しなくなりました。

 そして、電話帳は、毎年、新しいものが発行され、古い電話帳は廃棄されるのが通常なので、一度、掲載中止の措置をとれば、第三者が10年も前の古い電話帳で電話番号を調べて電話をしてくる、ということは、普通はあり得ないことです。

 ところが、インターネットの発展に伴い、大きな問題が出てきました。

 「ネットの電話帳」というサイトが、10年前、15年前の古い電話帳のデータを網羅的に収拾して、これをネットで公開するようになったのです。

 その結果、電話帳には自宅の電話番号を載せていないはずなのに、第三者に電話番号を知られて執拗に電話をかけて来られるなどの被害が続出し、中には、自宅にまで押しかけて来たりといった、ストーカーまがいのことをされて困っている方もあるようです。

 では、このように過去の電話帳から情報を取得してネットで公開する行為は許されるのでしょうか。常識的に考えて、氏名、住所、電話番号といった個人情報を本人の承諾なく公開する行為はプライバシーの侵害として許されないはずですが、「ネットの電話帳」の主宰者は、【 ネットの電話帳が適法である理由】 を幾つか掲げて、適法だと主張しています。

 いずれも、とるに足りない主張なのですが、誤解して、電話帳から削除することを諦めておられる方も多いと思いますので、以下に、その主張を掲げ、どこが誤っているのかを、説明します。(なお、下記のBは、「ネットの電話帳」の主宰者が明示的に主張しているわけではないのですが、おそらく、こういうことを言いたいのだろうと推察して掲げたものです)


 @「本サイトに掲載されている情報は、 過去にハローページにより公に出版された情報をそのまま利用したものであり、 個人情報保護法の規制を受けません。」との主張


  削除請求は、個人情報保護法に基づくものではなく、人格権としてのプライバシーの権利が侵害されたことを理由とするものです。

 プライバシーの権利は、個人情報保護法が成立する遙か以前に、「宴のあと」事件(昭和39年9月28日東京地裁判決)で初めて認められ、その後、掲示板プライバシー侵害事件(平成11年6月23日神戸地裁判決)などを経て、権利として確立されたものです。

 従って、「個人情報保護法の規制を受けません」と言ったところで、削除請求を拒む根拠にはなり得ないのです。
    

 A「電話帳の掲載情報は、単に事実を羅列したものあることから、『思想又は感情を創作的に表現したもの』」ではなく、著作権法上の著作物に該当しません。」との主張


  これに関しても、情報を掲載された個人からの削除請求は、著作権侵害を根拠とするものではないため、「著作権法上の著作物に該当しません」と言ったところで、法的には、何の意味もありません。

 電話帳を発行したNTTが著作権侵害を理由に削除請求をするには、電話帳の情報が「著作物」と認められる必要がありますが、これは、個人からの削除請求とは無関係なことです。
 

 B「プライバシー侵害は、公になっていない情報について成立するものであり、一度でも過去に電話帳に掲載された情報については、プライバシー侵害の余地がありません。」との主張


 一度でも公になった情報はプライバシーとして保護されないというのは誤りです。

 掲示板プライバシー侵害事件(平成11年6月23日神戸地裁判決)では、職業別電話帳に掲載されている情報であっても、当該電話帳に掲載した目的と無関係のネット上の掲示板に無断で掲載することは、プライバシー侵害に該当するとの判断を示しています。


    

目次へ 

006 ネット情報の削除に朗報(東京地裁決定・大阪高裁判決) 2015.2.18

  インターネット上の誹謗中傷、プライバシー侵害に悩む方に朗報です。

 インターネット上に存在する、名誉毀損、プライバシー侵害のサイトに対しては、人格権に基づく削除請求をすることができます。

 そのようなサイトの数が限られた場合であれば、個別に削除の申し入れをしたり、個別に削除請求の裁判をすることによって、全てを削除することも可能です。

 ところが、「ニュースまとめサイト」「2チャンネルログ保存サイト」「ブログ」などでネット上に情報が拡散し、名誉、プライバシー侵害のサイトが多数存在する場合は、その全てを削除することは現実的には不可能であり、仮に削除することができるとしても、膨大な労力、時間、費用を要することになります。

  ただ、こういったサイトも、グーグル、ヤフーなどの検索サービスがなければ、ただ存在するだけであり、一般の人の目には触れません。サイトを見るには、そのサイトのアドレスを知っている必要があるのですが、アドレスを知っている人など、皆無といっていいからです。

 ところが、グーグル、ヤフーなどの検索サービスがあれば、特定の個人の名前などで検索すると、検索結果として、サイトのアドレスや、サイトの内容の一部を抜粋したもの(「スニペット」と言います)が表示され、多数の人の目に触れるのです。

 裏を返せば、仮に、多数のサイトが存在していても、グーグル、ヤフーの検索結果として表示されなければ、ネット上では、存在しないに等しく、人々の目に触れることはないので、実際上は、名誉、プライバシー侵害は、ゼロと言えないまでも、極めて限定的なものとなります。

 そうだとすると、個別にサイトの削除をする代わりに、グーグル、ヤフーに、そのような検索結果の表示をすることを禁止するのが、名誉、プライバシーを護るのには効果的ということになります。

 ところが、これまで、グーグルやヤフーは、検索結果は、検索プログラムが機械的、自動的に表示するものであって、グーグルやヤフー自体が、名誉毀損、プライバシー侵害に当たる情報を表示しているのではないという理由で、検索結果の表示の削除を拒否してきました。

 これに対して、このようなグーグル、ヤフーの主張は認められない、すなわち、名誉毀損、プライバシー侵害の情報は、検索結果としての表示であっても、検索サービスの会社の意思に基づく表示であり、そのような表示は許されないとする裁判所の判断が、昨年10月と今年の2月に、相次いで示されました。

 一つは、グーグルに削除を命じた東京地裁の仮処分決定(平成26年10月9日)であり、もう一つは、ヤフーに関する大阪高裁の判決(平成27年2月18日)です。

 東京地裁決定については、毎日新聞に詳しい解説が出ているので、こちらを参照して下さい。  【 毎日新聞 2014.11.9

 大阪高裁事案は、執行猶予判決が出たにもかかわらず実名で検索すると逮捕歴を記載したサイトの内容が表示されることから、ヤフーに対し、検索結果の表示を行わないことを求めた事案です。

 第1審京都地裁(平成26年8月7日)は、ヤフー自身が逮捕歴の表示をしているのではないとして、請求を棄却しました。

 これに対し、第2審大阪高裁は、以下のとおり、ヤフー自身が逮捕歴を表示したものであり、検索サイトであるからといって、検索結果の内容につき責任を免れることはないとの判断を下したものです。


 被控訴人は,本件検索結果の表示のうちスニペット部分につき,自動的かつ機械的にリンク先サイトの情報を一部抜粋して表示しているにすぎず,被控訴人が表現行為として自らの意思内容を表示したものということはできず,名誉毀損となるものではない旨主張する。

 しかしながら,その提供すべき検索サービスの内容を決めるのは被控訴人であり,被控訴人は,スニベットの表示方法如何によっては,人の社会的評価を低下させる事実が表示される可能性があることをも予見した上で現行のシステムを採用したものと推認されることからすると,本件検索結果は,被控訴人の意思に基づいて表示されたものというべきである。


 このように、大阪高裁は、検索結果を表示する行為が名誉毀損となりうることを認めながらも、逮捕後2年しか経ってない段階での本件逮捕歴の表示は、公共の利害に関することであり違法性が阻却されるとして、ヤフーに対する削除請求を棄却しています。

 既に執行猶予判決から2年近く経った段階でも逮捕の事実の表示につき違法性が阻却されるという大阪高裁の判断は、社会内での更生を期待して刑の執行を猶予した刑事裁判所の判断を蔑ろにして、ネット情報による過度の社会的制裁を合法化することによって更生を妨げるものです。

 最高裁では、執行猶予制度の刑事政策的な意義ネット社会の状況を十分に踏まえた上で、高裁判決が是正されることが、期待されます。

 大阪高裁の事案では、上記のように逮捕歴の表示につき違法性が阻却されるとして、結果的に、名誉毀損は成立せず、ヤフーに対する削除請求は認められませんでした。

 しかし、大阪高裁の判断の枠組みを前提にすれば、明らかな誹謗中傷、名誉毀損、プライバシー侵害については、検索サービスの会社に対する削除請求が認められることは、間違いありません。

 その結果、名誉毀損、プライバシー侵害の情報がネット上に多数拡散している場合でも、
個別の削除を求める必要はなく、ヤフー、グーグルなどの検索サービスの会社を相手に削除を求めれば足りることになります。

 この意味で、今回の大阪高裁の判決は、ネット上の誹謗中傷、プライバシー侵害に悩む人たちにとって、画期的な判決と言えるでしょう。

 大阪高裁判決は、東京新聞で報道されているので、こちらを参照して下さい。 【 東京新聞 2015.2.19】  

 ネット情報の削除に関しては、この問題の第一人者であり、東京地裁決定の債権者代理人をされている神田知宏弁護士の ブログ【 IT弁護士カンダのメモ】を、ご覧下さい。

 また、逮捕歴などの表示など、検索サービスの発展に伴う諸問題に関しては、大阪高裁判決の控訴人代理人である島崎の【 グーグル監視委員会(仮)】 を、ご覧下さい。 

目次へ 

005 2ちゃんねるログ保存サイトとグーグル検索 2012.8.11    

 前回、2ちゃんねるログ保存サイトからの情報の削除について説明しましたが、2ちゃんねるログ保存サイトから個人の氏名を含む問題の情報が削除された場合でも、氏名を検索語としてグーグルで検索すると、削除されたはずの情報が、検索結果として表示される場合があります。

 これは、グーグルの検索の仕組みに原因があります。というのは、グーグルは、検索の時点では、実際に各サイトを巡回して検索しているのではないからです。では何を検索しているのかというと、過去にグーグルが各サイトを自動的に巡回して保存したデータの中を検索しているのです。

 この保存されたデータのことをキャッシュデータと呼びますが、当然のことながら、キャッシュデータは、検索時点のサイトの情報ではなく、過去の情報なのです。従って、問題のサイトから問題の情報が削除されていたとしても、検索の時点で問題の情報が残っているキャッシュデータを検索に行けば、検索結果として、その問題の情報が表示されるということになるのです。

 もちろん、時間がたてば、キャッシュデータも更新されて、問題の情報が削除されたものとなるため、検索をしても表示されることはなくなるのです。

 では、キャッシュデータが更新されるまでに、どれくらいの時間を要するのか、と言われると、あくまでも、私の限られた経験に基づくおおよその期間ですが、早ければ2、3日、時間がかかって3か月、といったところです。

                                クリックすると、大きな図(PDF)を表示


目次へ 


004 ネット情報の削除と訂正                          2012.7.23

■ ネット情報による被害の救済 ■

 2ちゃんねる等のネット上の掲示板やブログへの書込によって、誹謗中傷された、名誉を毀損された、プライバシーを侵害された、といった相談を受ける機会が増えています。

 この場合、加害者を特定し、情報を削除させ、損害賠償請求する、と言うのも重要なことですが、 これに劣らず重要なのが、ネット上に拡がった情報を速やかに削除、訂正する、ということです。

 インターネットが登場する前であれば、名誉毀損、プライバシー侵害の対策としては、最初に情報を発信した加害者に対する請求だけで十分でした。

 ところが、インターネットが登場し、一度発信された情報が、そのまま、あるいは、加工されて、ネット上で、次々再生産されるようになってからは、 これらの情報をコントロール(削除・訂正)することが、被害者にとって極めて重要なことになっています。

 情報の拡散は、一般的には、以下の形態をとり、それぞれに対策が必要です。

 @2ちゃんねるに書き込まれた情報を自動的に保存、公開するサイト
 A個人のブログ、ホームページ等
 BWikipedia

■ 2ちゃんねるログ保存サイトからの情報の削除 ■

 一昔前までは、ネット掲示板での名誉毀損、プライバシー侵害の対策といえば、2ちゃんねる対策ということだったのですが、現在では、状況が一変しています。2ちゃんねるのログを保存し、公開するサイトが登場し、特に、ここ数年、そのようなサイトが急増しているからです。

 その結果、特定個人の名前をグーグルで検索すると、本家の2ちゃんねるの情報は出てこないのに、こういった2ちゃんねるログ保存サイトの情報が、ずらっと出てくるようになっており、その対策が必要不可欠となっています。

 これらのサイトは、一般的には、削除要請を受け付けているので、そのサイトが要求する削除手続に従って削除要請をすれば、多くの場合、削除されます。

 削除要請の手続は、サイト毎に様々であり、要請者の戸籍上の氏名を明らかにすることが要求されたり、代理人による削除の場合は弁護士からの要請に限定されたり、本人との関係を詳細に記載することを要求される場合もあります。

 また、削除要請から、実際に削除されるまでの時間も、様々で、サイトによっては、自動対応しているのか、わずか数分で削除されるケースもあれば、数日かかるケースもあります。

 なお、こういった2ちゃんねるログ保存サイトを整理したサイトを見つけたので、紹介しておきます。

 「へぼいいいわけ」というブログの、 2ちゃんねるログ保存サイトを比較する という題名の記事です(但し、サイトを網羅しているわけではありません)。

■ 個人のブログ、ホームページからの削除 ■

 これは、もう実に様々で、個別に対応していくほかありませんが、多くの場合、弁護士として、根拠を示して要請すれば、速やかに削除、訂正に応じてもらえます。

 なかには、任意の削除に応じないケースもありますが、その場合は訴訟により削除請求し、併せて損害賠償請求をすることになります。




■ Wikipedia の情報の訂正 ■

 自らアカウントを作成して、自分で直接、記事を編集することが可能です。



目次へ 


003 ネット情報の日付の偽装                          2011.9.5

■ ネット情報の日付の偽装? ■

 私が経験した裁判で、こんなことがありました。

 私の依頼者の方が、インターネットで電子書籍を販売していたのですが、4か月程たって、そっくりの電子書籍が販売されるようになり、売上が激減してしまいました。そこで、その相手に対し、著作権侵害を理由に損害賠償を求める裁判を起こしたのです。

 裁判で、相手は、自分の電子書籍は独自に作成したものだと主張しました。そして、私の依頼者が販売を開始する数か月前に、自分は試作品をインターネットで公開していたと主張し、その証拠に、その試作品について書かれたブログが存在するとして、私の依頼者が販売を開始した日の数か月前のブログのハードコピーを、証拠として提出してきたのです。

 そのブログが、真実、その日付に作成されたものであれば、独自に作成したものだという相手の主張が正しいということになってしまいます。

■ ネット情報の日付の偽装方法 ■

 そこで、そのブログのサイトでは、日付を遡ってブログ記事を書くことができるのではないかとの疑問から、私自身が、そのブログのサイトの会員になって調べてみました。

 そうすると、案の定、日付を遡ってブログ記事を書くことができたのです。
 例えば、こんな具合です(但し、裁判で相手が証拠としたのは、別のブログサイトです)。



 このように「日時設定」の欄に、実際の書込をした日より、遙か昔の日付を入力して、ブログ記事の作成日付を偽装することができるのです。

 実際、
ヤフー知恵袋 によると、ヤフーブログ以外は、皆、日付を遡って記載することができるようです。

 ということは、自分が書いたブログの記事を、将来、証拠として確実に用いたい場合は、ヤフーブログのように、 日付を遡ることのできないブログを利用するか、その都度、 「ウェブ魚拓」をとっておくしかない、ということになります。

目次へ 

002 10年前のネット情報の見つけ方                 2011.8.28

■ インターネットアーカイブ ■

 「ネット情報の存在証明」と「リンク切れ対策」で、 「ウェブ魚拓」 を紹介しましたが、自分で「魚拓」をとっているとか、他の人が偶然「魚拓」をとっていて、そのアドレスを見つけることができた、といったことがない限り、古いホームページの情報にアクセスすることはできません。

 ところが、「魚拓」をとっていない古いホームページの情報でも、 インターネット・アーカイブ というサイトで、閲覧したいホームページのアドレスを入力すると、かなりの確率で、 当時のままのホームページを見ることができるのです。

 このインターネット・アーカイブというサイトは、グーグルと同じように、世界中のネットにアクセスして、そのコピーを自社で保管しているのです。グーグルと違うところは、過去にアクセスして保管したサイトの情報についても、ほぼ永久に保存しているようなので、アドレスさえ、わかれば、相当過去の情報も入手することができるのです。

 ■ グーグル、インターネットアーカイブ、ウェブ魚拓の比較 ■

  グーグル インターネット・アーカイブ ウェブ魚拓
保存方法 自動的 自動的 人手
対象となるウェブサイト 網羅的(但し、完全に独立して、どこからもリンクされていないサイトは、対象外) ほぼ、網羅的 限定的(誰かが意図的に指定したものに限る)
保存の頻度 頻繁(数分〜1か月。対象となるウェブサイトの更新頻度により大きく異なる。) 様々(1日〜数年) 様々
更新後の古い情報の取り扱い 一世代前の分を除き、廃棄 そのまま保管 そのまま保管
情報へのアクセス方法 検索語入力による検索 インターネット・アーカイブのサイトで、目的のウェブサイトのアドレスを入力 → その後、どの時点の情報かを選択 グーグル等での、検索語入力による、検索(但し、ヒットする可能性は少ない)

ウェブ魚拓のサイトで、目的のウェブサイトのアドレスを入力 → その後、どの時点の情報かを選択

ウェブ魚拓としてのアドレスを直接入力(自分でウェブ魚拓をとってアドレスを保管しておいた場合や、魚拓をとった第三者からアドレスを入手できた場合に限る)


目次へ 

001 「ネット情報の存在証明」と「リンク切れ対策」          2011.8.11

■ 「リンク切れ対策」 としてのウェブ魚拓 ■

 ホームページで新聞の記事などにリンクを張っていても、何日かすると、リンク切れになってしまうことが、よくあります。

 そんなときに便利なのが、 「ウェブ魚拓」です。

 この「ウェブ魚拓」のサイトに目的の記事のアドレスを登録をした上で、登録先のアドレスに対してリンクを張っておけば、 元々の記事が削除されても、リンク切れのために記事を表示ができないといった事態を避けることができます。

 先日、「讃岐うどん」の商標登録−続報(京野菜の商標登録) の中で、京都新聞の記事に リンクを張ったのですが、それだけでは、この記事が削除されると、リンク切れになってしまいます。ところが、ウェブ魚拓を利用 すれば、いつまでも、この記事を見ることができるのです。

  京都新聞2011.8.8夕刊      こちらは、いずれ、リンク切れになるはずです。
  京都新聞2011.8.8夕刊の魚拓  こちらは、リンク切れにはなりません。


 ■ 「ネット上の存在証明」としてのウェブ魚拓 ■

 ウェブ魚拓は、魚拓を登録した日時についても、同時に記録してくれるので、その記事が、 「その日時に、ネット上に存在した」ということを証明する手段としても利用することができます。

 例えば、自分がホームページに書いた文章が、他人に盗用されたと主張する場合、相手の文章が ネット上に出現する以前に自分の文章がネット上に存在した、ということを証明する必要がありますが、 ウェブ魚拓をとっておけば、簡単に証明することができるのです。



京都新聞【2017.4.26】に掲載された、私の談話です。


目次へ 

▲pagetop

| HOME | IT関連業務 | 一般業務 | プロフィール | 地図・費用 | お問い合わせ | 
| トピックス | IT問題に悩む、弁護士の方へ | ● 弁護士業務とIT | エクセルと業務 |